「踊る大捜査線」は、1997年にフジテレビで放送されたテレビドラマシリーズで、その後も映画化やスペシャルドラマとして続編が制作され、多くのファンから愛されてきた。しかし、2012年に公開された「踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望」は、シリーズのファイナルとして期待されながらも、一部のファンや批評家から「ひどい」と評されることとなった。本記事では、その評価の背景と理由について探っていく。
1. 「踊る大捜査線」シリーズの成功と期待
「踊る大捜査線」は、警察組織の日常をリアルに描きつつも、ユーモアと緊張感を巧みに融合させたドラマとして高い評価を受けた。主人公・青島俊作(織田裕二)を中心に、湾岸署の刑事たちが事件を解決していくストーリーは、視聴者に大きな感動と興奮を与えた。特に、2003年に公開された「踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」は、興行収入173億円を記録し、日本映画史上でも高い評価を得た。
そのため、2012年に公開された「THE FINAL」は、シリーズの完結編として大きな期待を集めた。ファンたちは、青島や真下正義(ユースケ・サンタマリア)、恩田すみれ(深津絵里)たちの最後の活躍に期待を寄せていた。
2. 「THE FINAL」のストーリーと問題点
「THE FINAL」のストーリーは、湾岸署がテロリストの標的となり、青島たちがその危機に立ち向かうというものだった。しかし、このストーリーにはいくつかの問題点が指摘された。
2.1 ストーリーの陳腐さ
「THE FINAL」のストーリーは、テロリストとの対決というハリウッド映画的な要素が強く、これまでの「踊る大捜査線」シリーズが持っていたリアルな警察ドラマの魅力が薄れていた。シリーズのファンは、警察組織の内部事情や日常的な事件解決を描くことに魅力を感じていたが、「THE FINAL」ではそれが失われ、代わりに大規模なアクションシーンが目立つようになった。
2.2 キャラクターの扱い
これまでのシリーズでは、青島をはじめとするキャラクターたちが個性的で深みのある描写がなされていた。しかし、「THE FINAL」では、キャラクターたちの成長や人間関係の深まりが十分に描かれず、単なるアクション映画の登場人物のように扱われてしまった。特に、真下や恩田といった人気キャラクターの出番が少なく、その存在感が薄れてしまった点も指摘された。
2.3 結末の唐突さ
「THE FINAL」の結末は、シリーズのファンにとって納得のいくものではなかった。青島の最後の決断や、キャラクターたちの未来が曖昧なまま終わってしまい、これまでのシリーズで築き上げられてきた感情的な結びつきが十分に活かされなかった。この結末の唐突さが、ファンの失望を招く一因となった。
3. 批評家とファンの反応
「THE FINAL」は、公開当初こそ興行収入で一定の成功を収めたものの、批評家やファンからの評価は厳しいものとなった。多くの批評家が、ストーリーの陳腐さやキャラクターの扱いの不十分さを指摘し、シリーズのファイナルとしてふさわしい作品ではなかったと評した。
ファンからの反応も同様で、特に長年シリーズを愛してきた視聴者からは「期待外れ」「ひどい結末」といった声が多く上がった。SNSや映画レビューサイトでは、失望感を表明するコメントが数多く寄せられ、シリーズの最後を飾る作品としての責任を果たせなかったという意見が目立った。
4. 制作側の意図と現実
「THE FINAL」の制作陣は、シリーズの最後に相応しい大作を目指し、大規模なアクションシーンやハリウッド的な要素を取り入れることで、新たな視聴者層を取り込もうとしたと考えられる。しかし、その結果、これまでのシリーズのファンが求める要素が失われ、かえって作品の質が低下してしまった。
また、シリーズの最終章としてのプレッシャーも大きく、制作陣が本来の「踊る大捜査線」の魅力を再現することが難しかったのかもしれない。特に、織田裕二や深津絵里といった主要キャストのスケジュール調整が難しく、キャラクターたちの描写が不十分になったという背景も指摘されている。
まとめ
「踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望」は、シリーズのファイナルとして大きな期待を集めたが、その期待に応えることができなかった作品となってしまった。ストーリーの陳腐さ、キャラクターの扱いの不十分さ、結末の唐突さなど、多くの問題点が指摘され、ファンや批評家から「ひどい」と評される結果となった。
しかし、それでも「踊る大捜査線」シリーズ全体として見れば、日本のテレビドラマ史に残る傑作であることに変わりはない。ファンにとっては、「THE FINAL」の失望を乗り越え、これまでのシリーズの素晴らしい思い出を大切にすることが重要だろう。そして、今後も「踊る大捜査線」の世界観やキャラクターたちが、新たな形で再び登場することを願う声は少なくない。
「踊る大捜査線」は、そのリアルな警察ドラマの描写とユーモア、そしてキャラクターたちの魅力によって、多くの人々に愛されてきた。その遺産は、「THE FINAL」の評価に関わらず、今後も長く語り継がれることだろう。